マグネシウムは、健康を支える重要なミネラル。骨や筋肉、神経の働きをサポートし、睡眠の質向上やPMS、片頭痛などの緩和にも役立つことが近年の研究でも分かっています。日本人の多くが不足しているとされているマグネシウムについて、その役割や健康効果、不足によるリスク、効率的な摂取方法について詳しく解説します。
マグネシウムの役割
ミネラルの一つであり、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミンに並ぶ、五大栄養素の中でも重要な役割を担っているマグネシウム。人間の体内では、その6割が骨や歯に含まれ、残りは筋肉や脳・神経に存在しています。体内にある600種類もの酵素を活性化する働きを持つことから、筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温や血圧の調整など、さまざまな体の機能を正常化する役割を果たしているため、健康と若々しさを保つためには欠かせない存在でもあります。身近な例を挙げると、歩く・走る・座る・ジャンプすると日常生活の中で起こるあらゆる動作や、食事で摂取した栄養をエネルギーに変換する働きなど「生きるため」「体を動かすため」にもマグネシウムは重要な役割を持っています。
欧米先進国では、以前からマグネシウムの摂取基準が設定されていましたが、日本ではその重要性が広く認識されるまでに時間を要しているというのも正直なところ。健康な成人男性で約350〜380mg、成人女性で約270〜290mgの一日当たりの栄養所要量が定められたのは、平成12年(2000年)です。そのため、欧米に比べ、日本ではマグネシウムの重要性が十分に知られていないというのが現状です。
マグネシウムの重要性とは?
体内で重要な役割を果たしているマグネシウム。健康を維持する上で欠かせないミネラルですが、現代では不足しがちな成分でもあります。そんなマグネシウムに期待できる効果をまとめてみました。
睡眠障害の予防ケア
睡眠ホルモン「メラトニン」の生成に必要で、睡眠の質を向上させる効果があるとされているマグネシウム。不足するとメラトニンの生成が減少し、不眠症の原因となる可能性が指摘されています。また、睡眠ホルモンと呼ばれる「レニン」の働きにも関与し、自然な眠りをサポートする効果も期待できます。
更年期症状への影響
マグネシウムは、骨の健康を維持し、更年期女性の骨密度向上に寄与することがわかっています。また、うつ症状などの精神症状を緩和する効果も期待できるとされています。
PMS(月経前症候群)への影響
PMSの症状緩和にも効果的とされているマグネシウム。複数の研究で、マグネシウムのサプリメントがPMSの特定の症状を迅速かつ完全に解消することが確認されているそうです。特に「群発性疼痛」や「ネガティブな気分」の改善があったという報告も。
片頭痛の軽減
マグネシウムは片頭痛対策としても注目されています。硫酸マグネシウムを投与された患者は、対照群と比較して、痛みや関連症状が統計的に改善したという報告もされているそうです。とりわけ月経関連の片頭痛を持つ女性にはイオン化マグネシウム欠乏症の可能性があるとされており、マグネシウムとカルシウムのバランスが崩れていることが関係している可能性があります。アメリカ・片頭痛財団(The American Migraine Foundation)は、「妊婦でも安心して利用できる最も効果的な片頭痛対策は、マグネシウムを積極的に摂取することである」と明記されているほどマグネシウムは大切な成分といえるでしょう。
なぜ慢性的にマグネシウム不足になるのか?
マグネシウム不足の主な原因は、食生活の変化と考えられています。そもそも古くから日本では伝統的に玄米や海藻類、大豆製品を摂取する習慣があり、これらはマグネシウムの豊富な供給源でした。ところが、食品の精製が進み、玄米が白米に、黒糖が白糖に、粗塩が精製塩に置き換えられたことで摂取量が減少。また、カルシウムとマグネシウムの2:1という理想バランスに対し、カルシウムの重要性が強調される一方で、マグネシウムの必要性は十分に認知されていません。さらに、ストレスによって体内のマグネシウムが排出されやすくなることも、不足を助長していると言えるでしょう。
マグネシウムを摂る方法
厚生労働省の調査では、日本人は男性で1日あたり約130mg、女性で約80mgのマグネシウムが不足しているそうです。マグネシウムを摂取するには、食べ物やサプリメントが主な方法。ここではマグネシウムを含む食品をご紹介します。
- 海藻類(あおさ、あおのり、ひじき、わかめ、ふのり、昆布)
- 穀類(玄米、五穀米)
- 納豆や豆腐(本ニガリを使用したもの)
- 椎茸(干したもの)、芋、とうもろこし、ほうれん草
- 魚、牡蠣
- ごま、くるみ、カボチャの種、アーモンド
海藻類はマグネシウムが豊富な海で育つため、手軽に摂れる食材です。食べる以外にも、近年はエプソムソルトなどの入浴剤や塗るケアといったマグネシウムも注目を集めています。
骨や神経の健康維持だけでなく、更年期症状やPMS、片頭痛の改善、さらには睡眠の質向上にも役立つとされているマグネシウム。現代の食生活では不足しがちな成分だからこそ、意識的にマグネシウムを含む食品を取り入れ、健康をサポートする習慣を身につけてみてはいかがでしょうか。
【取材協力】