2026年3月7日(土)から3月9日(月)の3日間、宮城県のセキスイハイムスーパーアリーナで開催された「東和薬品 presents 羽生結弦 notte stellata 2026」。東日本大震災から15年という節目の年に行われた本公演は、坂本龍一さんと縁のある東北ユースオーケストラによる生演奏など、特別な演出が詰まったアイスショーとなりました。今回は、TOHOシネマズ 新宿で実際に鑑賞した様子をレポートでお届けします。
東日本大震災の記憶と希望をつなぐアイスショー

「notte stellata」はイタリア語で満天の星や星月夜を意味する言葉。2011年3月11日、東日本大震災の被害を受け避難所で過ごしていた羽生結弦さんが見上げた夜空には、美しい星空が広がっていたそうです。その光景から感じた希望。被災地を照らした星のように、少しでも人の心を明るくしたい。そんな想いから生まれたのが、このアイスショー「notte stellata」です。2023年にスタートしたこの公演は、震災の記憶を未来へつなぐ舞台として多くの人の心を動かし、東日本大震災から15年という節目の年に、4回目の開催を迎えました。
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全国47都道府県で実施されたライブ・ビューイング&ディレイ・ビューイング
会場となったのは宮城県のセキスイハイムスーパーアリーナですが、今回の公演は、現地だけでなく全国の映画館でも体感できるライブ・ビューイング&ディレイ・ビューイングの機会が用意されていました。TOHOシネマズやMOVIX、イオンシネマなど全国47都道府県の映画館で実施され、多くの劇場で上映されました。

今回訪れたのはTOHOシネマズ 新宿。上映スケジュールが表示された電子掲示板を見ると、そこには「完売」の文字。パンフレットや関連グッズが並ぶシネマショップに足を運ぶと、公式パンフレットの見本が展示されています。

購入は一人3点までという制限付き。他会場でも朝から売り切れが続出していると聞き、この公演への注目度の高さを実感しました。劇場内に入ると、客席は見事に満席。上映前から期待に満ちた空気が漂っています。

『notte stellata』で始まる物語
上映が始まり、まず映し出されたのはリンクを包み込むような星空の演出。座長を務める羽生結弦さんの想いが語られ、「ノッテステラータに希望を込めて」という言葉とともに始まったのが、羽生結弦さんによる『notte stellata』です。羽生結弦さんは2025年8月から「メンテナンス期間」としてパフォーマンス向上に取り組んでいました。そのため、この瞬間を待ち望んでいたファンも、きっと多かったことでしょう。リンクの上で紡がれる繊細な動き、そして圧倒的な表現力。スクリーン越しでも、その美しさに思わず息をのんでしまうほどでした。
オープニングでは、カール・ヒューゴ氏作曲の『Twinkling Stars of Hope(輝く希望の星たち)』が流れ、出演プロスケーター全員による幻想的なパフォーマンスが披露。出演したのは羽生結弦さんをはじめ、ハビエル・フェルナンデスさん、ジェイソン・ブラウンさん、シェーリーン・ボーン・トゥロックさん、宮原知子さん、鈴木明子さん、田中刑事さん、無良崇人さん、本郷理華さん、ビオレッタ・アファナシバさんという豪華な顔ぶれ。演技後、羽生結弦さんはマイクを手に取り「希望の星になれるように、絆を感じられるような公演にしたい」と語るその言葉が、このアイスショーのテーマを象徴しているようでした。
本郷理華さん、鈴木明子さん、無良崇人さんと、情緒豊かなプログラムが続く第一部。映画館ならではの大音響によって、氷を削るエッジの音やスケートの滑走音までリアルに響き渡り、リンクサイドにいるかのような臨場感が味わえるのもポイントです。さらに大スクリーンでは、表情の細やかな変化や指先のニュアンスまで鮮明に映し出され、演技の世界観に深く引き込まれました。続いて登場したビオレッタ・アファナシバさん、ジェイソン・ブラウンさん、ハビエル・フェルナンデスさんは、それぞれの個性が際立つ圧巻のパフォーマンスを披露。会場では見逃してしまいがちな細部の演技やスピード感、ジャンプの高さまでもがしっかりと伝わり、映画館だからこその「もう一歩踏み込んだ鑑賞体験」を楽しむことができました。
第一部終盤では、東北ユースオーケストラが坂本龍一さんの『Merry Christmas Mr. Lawrence』を演奏。そして羽生結弦さんとの共演による『Happy End』が披露されます。この演技でまず感じたのは、羽生結弦さんのさらなる進化。ジャンプやスピンだけでなく、身体の強さや表現力まで大きくレベルアップしていることがスクリーン越しに伝わってきました。特に印象的だったのは、羽生結弦さん自身が音楽解釈をもとに振り付けを行うセルフコレオ。氷上に大の字で倒れ込む大胆な振り付けなど、従来のフィギュアスケートの枠を超える表現が光りました。
坂本龍一の音楽とともに紡ぐ第二部からクライマックスへ
40分の休憩を挟んだ第二部は、東北ユースオーケストラからのメッセージとともに始まります。坂本龍一さん作曲の『Little Buddha』に合わせて、シェーリーン・ボーン・トゥロックさん、宮原知子さん、鈴木明子さん、田中刑事さん、無良崇人さんがパフォーマンスを披露。
ビオレッタ・アファナシバさんの演技では、観客の手拍子が一体となり、その熱気が映画館の音響を通してダイレクトに伝わる場面も。続くシェーリーン・ボーン・トゥロックさんのパフォーマンスでは、椅子を使った情熱的な演技が展開され、大スクリーンに映し出される迫力ある動きや表情に圧倒されました。そして、ハビエル・フェルナンデスさん、田中刑事さん、宮原知子さん、ジェイソン・ブラウンさんへと続く流れの中で見えてくるのが、それぞれが持つ芸術性と迫力ある滑り。遠方で会場に足を運べなくても、映画館という特別な空間で、大画面・大音響に包まれながら味わう時間は、もう一つの特等席。スマホやテレビで観る感覚とはまた違う、贅沢な体験でした。
第二部後半には、東北ユースオーケストラが再び登場。「音楽は生きようとする力を引き出し、一歩ずつ前へ進む勇気を与えてくれる」というメッセージとともに、坂本龍一さん作曲の『八重の桜』が演奏されました。この楽曲で披露されたのが、羽生結弦さんの新演目。生オーケストラの音色とともに紡がれる演技には、祈りのような想いが込められているように感じられました。滑り終えたあと、観客と東北ユースオーケストラへ深くお辞儀をする羽生結弦さんの姿も。映画館だからこそのカメラワークはライブ・ビューイングの特権なのかもしれません。
フィナーレでは出演者全員が登場し、カーテンコールへ。出演者たちが手を取り合いながらリンクを滑り、大歓声が会場を包み込む映像は圧巻の一言。命の尊さ、生きていることの喜び、人と人がつながる温かさ。苦しいと感じる瞬間があっても、今ある命を大切にしてほしい。そんなメッセージが伝わってくるフィナーレでした。すべての演目が終わると、出演者全員がリンク中央に集まり、マイクを使わずに「ありがとうございました」と叫ぶ…満面の笑顔で手を振る出演者たちが魅せてくれた感動のステージは、満天の星のように、心に残る舞台でした。
