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元宝塚・沙央くらまさんインタビュー|役者を軸に人と人をつなぎ、カタチにする【前編】

「コマさん」の愛称で親しまれる沙央くらまさん。宝塚退団後も舞台だけにとどまらず、コスメ監修やアパレル、地域プロデュースなど幅広い分野で活躍しています。その根底にあるのは、変わらない「役者」という軸と、人と人をつなぐ力。インタビュー前編では、これまでの歩みと現在の仕事に向き合う価値観について語っていただきました。

役者が「軸」。信じているものがカタチになりつつある今

Q:宝塚退団後、ご自身の表現や活動の幅が広がったと感じることはありますか?

沙央:思い返すと、宝塚を退団してから今年で8年経ちますね。さまざまな役を演じてきた中で、幅を広げるために次のステップとして卒業を決めて。自分の中でも意識的に「幅」を広げてきたところはあります。これまでは「宝塚」というチームでやってきましたけど、卒業すれば男性と共演する機会もありますし、作品ごとに初めて出会う方がいて、それ自体が挑戦でした。化粧品やアパレルに携わるお仕事も、宝塚として長年の舞台経験があるからこその苦労が繋がっているというか。舞台は降板や休演ができないですし、肌が荒れていても舞台化粧をしなければならない。美容と健康に関しては、宝塚時代からずっと自分の中で追求しながら向き合っていると思います。

 

Q:活動が広がる中での軸は何だったのでしょうか?

沙央:「役者」を軸に広がっていくというのは、すごく感じました。卒業して間もない頃は、それこそインフルエンサー的なお話もありましたが、自分は役者だという気持ちが強かったので、少し抵抗があったんです。だからこそ、私個人が本当に気に入っているものを投稿したいし、その気持ちを大切にしたいという思いからPR案件は基本的に受けていません。役者を主軸にやっていきたいという気持ちを持ちながら、仕事を広げていこうという思いでしたね。

 

Q:さまざまな活動をされる中で、最も自分らしさが出ていると感じる瞬間は?

沙央:私自身、宝塚にいた時から人と人とをつなぐ仲介役なんです。すれ違いやズレが起きているものを整える役回りが昔から多くて。そして両親が役者で、宝塚時代から外の知り合いが多いよねと言われていたので、周りからは「外に目を向けている人」と思われていました。でも、今思えばそれが自分の強み。宝塚と外の世界の常識、それぞれを知る機会があったからこそ今の自分がいるし、人と人をつなげたら新しい縁が生まれる。そこが自分の強みだと明確になったのが昨年です。2025年に私が主催したKOMAFESで強く感じました。宝塚を卒業後、アパレルやコスメなどの監修やプロデュース活動を経て、行き着いた先が「場」をプロデュースするということ。ないなら自分で空間を作ればいいという思いから、役者を軸に「人」と「場」をつなぎ、フェスが実現できました。そうした活動が自分らしさにもつながっていると思います。

▲生後5ヶ月の赤ちゃんや産前産後のママが安心して使える「赤ちゃんとママが一緒に摂れる粉末だし」

例えば、好きなお出汁を個人的に愛用していたことから企業とつながり、アンバサダーと広告塔になったのは私らしいところだと思います。そうした流れからご縁が広がり、舞台に興味を持ってくださる方が増えたり、これまで応援してくださった方が新しいお話をくださったり。偶然出会った人が私を通じて宝塚や商品に触れてくれたらうれしいですよね。そして、最終的に伝えたいのは、やはり日本文化。跡継ぎが減ってきている中で、厳しい世界で頑張っている伝統芸能の魅力を、もっと多くの人に知ってもらえたらと思っています。宝塚という厳しい環境で育てていただいたことには本当に感謝していますし、良い意味で自分らしさを追求できたと感じています。

 

Q:宝塚時代のご自身を振り返るとどうでしたか?

沙央:宝塚の中では異端児だったかもしれないです。「どこにでかけているんだろう?」と思われていたこともあったかなと…(笑)自由人だねと言われることもありましたが、私にとって外からの情報はインスピレーションそのもので、インプットとアウトプットはとても大事。もちろん、芸事に対しては真摯に向き合っていました。でも実は、人に嫌われるのが苦手なんです。そういう自分も含めて、今思うと、自分が絶対にブレないと決めている部分や信じているものに対しては、形にしていけばいつか理解してもらえると思えるようになりましたし、それが今につながっていると思います。 

景色が見えたら「やる」その直感は大事にしたい

Q:コスメ監修では、美に対する価値観をどのように反映されていますか?

沙央:Parsonal salon GiTAと共同で開発し、監修をさせていただいた目元美容クリーム「美uRA」は約3年かけて完成させたもの。最後の一滴まで使える容器で、目元とまつげの両方をケアできるアイテムです。この商品を作る際も宝塚時代の意識が根付いていて、かなりこだわりました。というのも、宝塚では目力がとても重要で、目が弱いとどんなに良い芝居をしていても伝わらない。目元は役者としてとても大切なパーツなので、そうした思いも含めて監修することに意味があると感じました。

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Q:アパレルブランドもプロデュースされていますが、ここでもモノづくりに対するこだわりはありましたか?

沙央:アパレルは昔から大好きです。あるスタイリストさんとの出会いから、ファッションに興味を持つようになり、シャツブランドのプロデュースもさせていただきました。ここでも宝塚時代の視点が生きていて…。宝塚の衣装はシルエットの美しさやトータルバランスがとても重要で、自分の体に合わせて細部までこだわります。美容や健康に対しても意識が高く、研究熱心な人が宝塚では多いと思いますが、私もその一人。そして、プロデュースもそうですけど、マルシェやフェスなど何かを作るときは一人ではできません。チームで進める点は宝塚と共通していて、とても面白いと感じています。

 

Q:プロデュースするだけでは終わらない、「沙央くらま」としての強みについて、どう思われますか?

沙央:「déjun(ドゥジュン)」というデアザフラビン配合の高機能スキンケアブランドがあるのですが、ブランドの認知を広めるお手伝いをさせていただくことになり、私が発表会を企画・開催したことがあります。最初は「déjun」だけの予定でしたが、「美uRA」も紹介する流れになり、新感覚ドライヤーのLICO(ライコ)も展示することになり…。さまざまなご縁が繋がり、素敵な発表会が開催できました。参加する人によって空気や流れが変わるところは、舞台と似ていますね。監修やプロデュースで終わらせず、自分が動いて発信する場を作る!ここは一貫して自分の強みだと思います。

▲プライベートでも愛用している「déjun」

Q:「やる」「やらない」の判断基準はどのようにされていますか?

沙央:その景色が見えたらやる、見えなければやらない、という感覚です。自分の中でイメージできるものはやりますし、違和感があればお断りします。何でも引き受けてしまうと、自分の軸がぶれてしまう気がするので。その感覚はこれまでの積み上げてきた経験からきているのかなと思います。

 

Q:断る勇気を持つことについてどう考えていますか?

沙央:断るって、すごく勇気がいりますけど…。私の場合、やると決めたことはしっかり向き合いたいですし、片手間にはしたくありません。それは悪いことではないと思っています。どんなことにも誠実に向き合うために、断る勇気も大切だと思います。

役者と地域活動、子育て。バランスは大事

Q:仕事と子育てのバランスはどのように取っていますか?

沙央:大きなトラブルでない限り、夜に打ち合わせは入れないようにしています。家で仕事をすることもありますが、子どもと向き合う時間は必ず作るようにしていますね。子どもを授かったとき、これまでのように舞台に立てなくなる可能性も考えました。そのときに、自分に何ができるかを考えて目を向けたのが地域活動です。地元である中野が大好きで、商店街を盛り上げたいという思いから動き始めました。そこからフェスの開催や観光協会との関わりにつながり、地域の方にも認めていただけたと感じています。主軸は舞台ですが、地域活動とのバランスを見てスケジュールを組んでいます。

 

Q:「KOMAFES 2025」の主催など地域活動にも貢献されていますが、どのような想いがありますか?

沙央:これまで関わってきた良いものや、私を選んでくださった方への恩返しが原点です。活動を通じて新しい出会いが生まれ、それがまた次の挑戦につながっています。

例えば、「ひのき(檜木)のバラ」は、福祉施設に還元したいという想いから、中野区の議員さんに相談してワークショップを開催。そこで販売したり、才能を広げたり…人や企業が興味を持ってくれれば、さらに循環させることができますよね。自分が動いたことで別の場所で広がっていく。大変なこともあるけど、大好きな人と一緒にやっていくことは楽しいです。

Q:仕事を通じて、自分自身で「進化した」と感じるところは?

沙央:これまで続けてきたことが少しずつ形になり、実績として積み上がってきていると感じています。先ほど触れたフェスやマルシェの主催、アパレルやコスメの監修以外にも、日本の伝統文化を縁で繋ぎ守る「ONE WORLD~Wrapping The Earth~」という伝統文化プロジェクトも発信していて。文化や芸術は途絶えてしまうと戻すことがでいない。受け継がなければ途絶えてしまう。日本文化芸術の魅力や価値を伝えるためにも、動かなくてはと思っています。役者を主軸に置きつつ、自分が何をしたいのか最近やっと見えてきました。

 

Q:今後の展望について教えてください

沙央:私は二児の母ですが、子どもが大人になったときに、諦めるのではなく挑戦を楽しむ生き方をして欲しいと思っています。今は結果やスピードが重視されがちで、「バズる」という言葉が当たり前になってしまった時代ですけど、コツコツ積み上げる「プロセス」を大切にして、乗り越える道のりや魅力の素晴らしさを伝えていきたいです。そして、子どもとの時間を充実させながら、ママ目線での取り組みにも挑戦していきたいですね。子どもを産んでも舞台役者として活躍できる環境づくりとか…。「子どもがいるから諦める」という考えをなくしていきたいと思っています。

役者という軸を持ちながら、表現の場を広げ続ける沙央くらまさん。その言葉から伝わってくるのは、「つなぐこと」で人生を切り拓いてきた強さでした。仕事も人も、そして文化も、自ら動くことで新しい価値が生まれていく。迷いや不安を抱えながらも、自分の信じるものを積み重ねていく姿は、一人の女性として共感する部分があります。変化の多い時代だからこそ、自分の軸を持つことの大切さを改めて教えてくれるインタビューでした。

 

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